「私は偏ってなんかいない」「冷静に判断してるつもり」
でも実はその“つもり”こそが落とし穴かもしれません。
私たちはしばしば、他人の偏見には敏感なのに、自分の偏りには気づきにくい傾向があります。それが「バイアス盲点」です。
この記事では、自分は偏っていないと思ってしまう心理と、それによってどんな誤判断が生まれるのかを深掘りします。
バイアス盲点とは何か?
バイアス盲点(bias blind spot)とは、「自分は他人よりも偏っていない」と信じてしまう心理的な傾向のことです。
つまり、他人の思考の偏りや判断ミスは気づけるのに、自分の中の偏見には気づけないという現象です。
「私はちゃんと冷静に考えている」という思い込みが、むしろ最大の落とし穴なのです。
なぜ人は「自分は大丈夫」と思ってしまうのか
この思い込みの根本には「自分は客観的である」という自己評価があります。私たちは、自分の意見は経験や知識に基づいた“正しいもの”だと考えがちです。
しかし、心理学者プリンストン大学のエミリー・プロニンらの研究では、人は他人のバイアスには敏感なのに、自分のバイアスには無自覚であることが証明されています。
思考は主観に満ちているにも関わらず、自分だけは例外だと信じてしまうのが人間です。
たとえ話:ゴーグルをかけたままの世界
たとえば、赤いサングラスをかけたまま世界を見ているとしましょう。
他人が「この花は白いよ」と言っても、自分にはピンクに見えるので「いや、赤っぽいでしょ?」と思ってしまいます。
それがバイアス盲点。自分の目に映る世界がすべてだと錯覚してしまうのです。
バイアス盲点が生む日常のすれ違い
バイアス盲点は、日常の小さな衝突にも大きく影響します。
- 「あの人は頑固だ」→ 自分は柔軟だと思い込んでいる
- 「相手は偏見で話してる」→ でも自分の意見も先入観に基づいている
- 「SNSの情報に流される人が多い」→ 実は自分も同じフィルターの中にいる
「自分だけは冷静で中立」という過信が、対話や理解を遠ざけてしまうのです。
どうすれば「私は大丈夫」から抜け出せるのか
バイアス盲点を完全に消すことはできませんが、意識するだけでも判断は変わってきます。
- 「自分もバイアスがあるかもしれない」と疑う
- 異なる視点の意見にも耳を傾けてみる
- あえて反対意見を探す習慣を持つ
自分の考えを「常に正しい」と思わず、一度立ち止まって見直すだけで思考のバランスが保たれます。
「私は偏っているかもしれない」そう思える人ほど、偏りから自由になれるのです。
まとめ
- バイアス盲点とは「自分だけは偏っていない」と思い込む心理
- この思い込みが、誤解や対立を引き起こす原因になる
- 「自分も偏っているかも」と意識することが第一歩
おわりに
「私は大丈夫」と思ったときこそ、考え直すチャンス。
それは弱さではなく、強さの証拠です。
偏りは誰にでもある。それを受け入れられる人ほど、物事をより深く、多面的に捉える力を持てます。
今日から少しだけ、“自分の偏り”にも目を向けてみませんか?